「2015年06月」の記事

わかってもらえない人

2015年6月23日 / 彷徨う人

 警察や何人もの弁護士に相談したけどわかってもらえなかったと訴えて相談に来る人が少なくない(タイプ1)。
 聞くと、あちらこちらへ話が飛び、いったい何時の何の話をしているのかがわからない。私は、ひととおり話を聞いた後、もう一度こちらから時系列で聞き直し、さらに、客観的な資料と照らしあわせて、どこが間違いなくて、どこがあやふやかを確かめながら、腑に落ちるまで話を聞き続ける。自分に起きた出来事を全部記憶してはいるものの、それがどういう順番で起きたかは、こちらから聞かなければなかなか答えられないようだ。そして、また、①「事実の有無」と②「その事実の評価」とを区別できないことがあり、たとえば、書面の内容が説明されないまま、強引に契約を勧められ、言われるままに署名捺印したためにできあがった契約書があるとき、「①署名捺印をしたことは間違いないが、②真意に沿わない契約だから納得できない。」と言うべきであるところを、この区別ができないまま、まとめて「署名なんかしてない!」と言ってしまう。
 この人から相談を受ける人は、これを聞いた瞬間、この人は信用できないと考えて依頼を断るのだと思うが、私は、それだけでは信用できないとは考えない。依頼を断るのは簡単だが、断ると、この人は彷徨うしかなくなる。
                                                                                                      
 警察や何人もの弁護士に相談したけどわかってもらえなかったが、そのことを少し隠して相談に来る人が少なくない(タイプ2)。
 何度も受任を断られている相談者は、「この事実を話すとまた断られるかも」と考え、意識的もしくは無意識的にその事実を避けて話そうとするから、話を聞いて腑に落ちるまでに相当の時間を要することもある。
話は、しばしば熱くなり、聞いている者の共感を引き出し、正義感を刺激するから、いったん受任することになることが多い。しかし、思うように事が進まないと、しばしば態度が不機嫌になり、結果を強く求めるようになり、進め方にも注文を出し、挙げ句の果てには、無能呼ばわりする。
 この人から相談を受ける人は、途中で、この人は信用できないと考えて依頼を断るのだと思うが、私は、これくらいでは信用できないとは考えない。依頼を断るのは簡単だが、断ると、この人は彷徨うしかなくなる。

介護疲れと高齢者虐待

2015年6月16日 / 彷徨う人

 一見、弱い者いじめを連想させる高齢者虐待。「育ててもらった恩を忘れてなんてひどいことをするんだ」と思う人もいるかもしれないけど、そう単純な話ではない。
 家庭内暴力の続きか、すなわち、親が年をとって、子どもの暴力を押さえきれなくなったのか?子どものころ虐待を受けた子どもが親に対して仕返しをしているのか?
 もちろん、そうではない。家庭内暴力で親に迷惑をかけた少年はすっかり更生し、反省し、むしろその頃のことを償うために親孝行したいと思っているし、虐待を受けていた子でさえ、弱ってしまった親を見ると、過去のことは水に流して親孝行したいと思っている。
 親の介護をしたことがある人なら、なぜ虐待が起こるのか説明をするまでもなくわかることだが、そうでない人には説明をしてもわからないかもしれない。
 恩を忘れたわけではなく、むしろ恩返しをしたいのに、恐ろしい現実を目の当たりにしたとき、脳を素通りして身体が衝動的に動きそうになるのだ。そして、辛うじて身体を止めることができたとしても、気づくと、あり得ない暴言が口を飛び出しているのだ。なぜならば、かつて、力強く仕事に邁進していた父が、ずぼんを大便で汚してうろたえるからである。かつて、優しく、限りない愛情を注いでくれた母親が、お金を盗ったんじゃないかと自分に疑いの目を向けて罵るからである。
 病気がそうさせているのだと頭ではわかっていても、身体がこれを受け入れられない。これが虐待の正体である。

 一人で、あるいは家族だけで介護を頑張ってはいけない。また、完璧な介護を目指してはいけない。
 自分の親の介護は人に委ね、人の親の介護を自分がするというくらいの気持ち。心穏やかに暮らしてさえいれば、老人ホームの中で退屈をしていても仕方ない。週末に一度だけ顔を見に行くだけでいいという気持ち。 それくらいでいかないと。

彷徨う人

2015年6月16日 / 彷徨う人

彷徨う人を見ると、放っておけない気持ちになる。
その姿は、まるで僕の母であり、父であり、かつての自分であり、そして今の自分のようだ。
                                                                      
何が起きてるかがわからない。
どうすればいいのかわからない。
どうしたいのかがわからない。
それはわかってるけど動けない。
動けるけどわかってもらえない。
                                                                      
彷徨う理由は人それぞれ。
                                                                      
ちょっと見せてみて?
なるほど、こう見えてるのか。僕なら、こうするかな。って。

彷徨う人
(田中千智氏の同名(彷徨う人)の作品です。私はこの絵に目を奪われてしまいました。)

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