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乳幼児虐待の冤罪

2015年7月8日 / 驕る人々

 児童相談所長には強大な権力が与えられている。すなわち、児童福祉法33条の「一時保護処分」である。これは、乳幼児及び児童への虐待が疑われるとき、児童相談所長が、その裁量で、いち早く、子どもを親から分離して保護することができる行政処分である。正しく運用されている限りはすばらしい制度であると思う。実際、これによって多くの子どもたちの命が助かったはずだ。
 しかしながら、物言えぬ乳幼児の保護については難しい問題がある。すなわち、子どもの言葉や表情から虐待の有無を推測することが困難であるが故に、虐待があったと事実誤認されるケースが相当数発生しているという点である。
この点、児童相談所は「母子が離れて生活することによるデメリットは、万が一の命の危険の回避というメリットと比べれば取るに足りない。」と言って事実誤認を恐れない(一時保護の後の施設入所に承諾を与える裁判所も同様の態度。)。しかし、これは、「愛着障害」という危険を知らない、あまりにも浅はかな考えである。

 おおよそ満1歳から3歳までは、子どもの成長過程において極めて重要な時期である。この時期、子どもたちは、母(または母に代わる特定の保護者)を安全基地としながら、時々母から離れ、まず、母と自分が異なる存在であることを知り、次に、安全基地を持っているがゆえに、母が一時的にそばにいなくても母の視線を意識した行動(悪いこと・危ないことをして母に叱られたくないとか、良いことをして母に誉められたいとかいう気持ちによって抑制される行動)がとれるようになるが、この時期にこの過程を経て成長しないと、自分の気持ちと他人の気持ちを区別できない子どもになったり、自分の身にふりかかる危険に鈍感な子どもになるおそれがあるからである。そうなると、その子どもは、少年時代を極めて不安定で危険な環境下で過ごすことになるが、その悪影響が明らかになるのは10数年後のことであるから、児童相談所長は、虐待の事実誤認の責任を、その子どもに対して取ることができないのである。
 よって、児童相談所長は、このことを肝に命じ、乳幼児の分離保護には最大の注意を払わなければならないし、その裁量の逸脱の有無を判断する裁判官も、同様であって、安易に児童相談所長の事実認定を追認することがあってはならない。

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